仮面ライダー龍騎

 一日かけて見終えた。最終回まで観た後でTVスペシャルのDVDも借りてきた(TVスペシャルは放映時は電話とネットでの投票によって結末が変わるマルチエンド。DVD版には両方の結末が収録されてる)。結論から言えば映画版「EPISODE FINAL」と全く異なったもの、ではなく結局世界的な設定は同じことだったのでネタバレを気にせずに書いてしまえば(気になる人は読まないようにして下さい)、




 「両親から虐待を受け幽閉されていた兄妹が、閉じられた現実の中、無意識下で鏡の中にもう一つの世界を生み出し」
 「妹が(多分、虐待によって)命を落としてしまい、兄の深い悲しみが、鏡の世界の妹の命を現実に引き出したが」
 「その命は現実世界ではタイムリミットが存在し、その命をとどめる方法として、他人の命を集めるシステム、ライダーバトルを行わせるものの」
 「妹はその命を拒んで死亡、兄はライダーの力で時間を戻して、ライダーバトルを何度もループさせる」

 というもの。何人ものライダーとかっこいいカードバトルの裏には、妹を求める兄の妄執だけが存在していた。楽園を求め繰り返される罪。方法と方向の違いはあれど、殆どSound Horizonの「Elysion」と同じ。ライダー同士のバトルには「最後まで生き残った者の願いが叶う」というルールがあったんだけど、それは結局まっぴらな嘘で、あくまで妹の命の代わりを作るためのシステム。ライダーになった人間はみんな自分の願いのために戦っていて、それも歪な人間ばかりで、結局みんな死ぬ。主人公も死ぬ。これは「仮面ライダー」じゃない。戦って強くて勝って、それで万事OKな物語じゃない。歪んだ人間が戦う、歪んだ愛の物語。「この戦いに正義は存在しない。あるのはただ、純粋な願いのみ」「その是非を問えるものは―――居ない」。
 正直単なるバトルロイヤル物だと思ってた。何かの為に戦う人間の命の火が消える、今でこそよくあるだけの話だと思ってた。それが肉親を求める禁忌と妄執、果ては時間のループまで混ぜ込んだ作品だったとは。どれも俺の好きな要素満載なんだけど、満載過ぎてもう何がなんだか、まだ混乱してる。ライダー達も本当にろくな死に方をしなくて、凄く苦しい。そして美しい。これは仮面ライダーじゃない。「子供向け」を超越した人間ドラマとかそういう類の何か。思うことはただ一つ。「ネタバレされなくて本当によかった」!!



 しっかり通して仮面ライダーを観たのはこれが二作目(平成ライダーは現在九作目)、放送は既に5・6年前という「仮面ライダー龍騎」。ずっと気になりながらも観る事が出来なかった作品。平成ライダーを観るなら絶対龍騎を観ようとずーっと思ってて。今、ちゃんと通して観ることができて、本当によかった。矛盾も蛇足も失敗もなく、映像作品としての「あえて語られない部分」も含みつつ、切なくも綺麗に終わらせた素晴らしい作品。ただ話の真相がアレだし、全員の終わり方が全て意味を持っているし、全編通してネタになってる部分も殆どないので、綺麗過ぎて手をつけられる部分が殆ど無いのが、寂しいといえば寂しい。俺の中で「仮面ライダー」は「ネタと矛盾展開満載の微妙な物語」っていう感じだったので、キャラ萌えでグッズ買ったりする気持ちの矛先が見付からない。ブレイドとか555は一度でも微妙っていう評価を聞いたことがあるのに、龍騎はそういうダメ出しレビューを全く見たことがなかったのには、それに見合うだけの理由があったんだな。ただこの気持ちを忘れたくないので、カードデッキはどうしても手に入れることにしました。劇中でも名刺入れになってたしね。インペラー好きじゃないけど。でも「一番好き」なライダーが決まらないので、結局全部居る13ライダーズセットを選びました。頼んだぜ、イチさん。
 微妙微妙言いながら一息にカブトやらなにやらも見るつもりだったけど、龍騎の完成度が本当に高かったのでキツイかもしれないなあ・・・。電王でシリアスの雰囲気が崩れた後なので、逆にキバはかなり観たい。電王も観たいけど、先に観てしまうと他のシリアスライダーは観れなくなりそうなのでタイミングが難しい。少なくとも龍騎の前に電王見なくて良かったと本気で思ってるし。うーむ。まあ勢いのあるうちに、で。555とカブトは観るかなあ。あと来年あたりもう一度カード系のライダーやってくれたら嬉しいな、という妄想。